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2017.04.07

寝しなの春樹ワールド

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いつも本を読むのは、ベッドに入って、枕元の蛍光スタンドの明かりで、眠気が来るまで、を習慣にしている。いつも亡母は布団に入る前に、滋養によいという赤葡萄酒を小さなグラスで飲んで、気持ちよさそうに寝息を立てていた。

村上春樹の「騎士団長殺し」は、2月の発売直後から毎日、亡母が赤葡萄酒を飲むように、ちびちびと少しずつ読み進めていて、この4月に読み終わる。
主人公36歳 美大を出て抽象画家を志すが生活のため肖像画を描く。3歳下の妻‘ゆず’から、好きな人が出来たから別れてくれ言われる。家を出て一人で車に乗り東北、北海道を1か月ほどかけて廻り、いまは、友人の父親で、老衰で伊豆の施設に入っている有名な日本画家の家を借りる。

小田原の少し海が見える高台の一軒家に一人で住む。その屋根裏に隠されていた日本画家の「騎士団長殺し」の包み開けたところから、奇妙な出来事が始まる。
絵の中から抜け出た60㎝程の小さな、古代人の衣装を身に付けた騎士団長が現れること、家の裏手の雑木林にある祠の穴を掘りだすことから、主人公は現実と架空の世界を行き来して物語は進む。

騎士団長という怪物、人が這いあがれない3㍍ほどの穴、の登場で、いよいよ村上春樹ワールドが始まったなあと期待させる。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では、怪物‘やみくろ’のいる地下を抜けて行く。『ねじまき鳥クロニクル』では、‘井戸’に閉じ込められる、だったなあ。

村上春樹ワールドに出てくるいつもの定番は、音楽。主人公がリビングで聞く日本画家か残したレコード。オーストリアのリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」、ベートーベン第7。ウイーンにいた日本画家がナチスのオーストリア併合に抵抗して、好ましくない外人として日本へ追放され、恋人と別れた失意のなか帰国した様子が浮かび上がる。

そして今回は、車が村上春樹ワールドへ誘っている。主人公が東北、北海道を廻るのは、プジョー205で、途中で壊れてカローラ・ワゴンに買い替える。東北太平洋岸で会う不気味な男の乗るスバル・フォレスタ。主人公の向いの山の上に一人住む54才の白髪の男は、望遠鏡で、昔付き合っていた恋人の子は自分の娘ではないかと、高台の向いの家をのぞき見している。持っている車はジャガー4台。覗かれた家の女性が乗ってくるのがプリウス。

主人公は8か月後に小田原を後にして、子供を産んだ妻‘ゆず’のもとに帰って、‘室’という子供を保育園へ連れていく日常が始まる。しかし‘室’が自分の子供であるかは分からない。そして「この世界には確かなことなんて何ひとつないかもしれない。でも少なくとも何かを信じることはできる」と。

寝しなの読書の欠点は、眠気に襲われると重い単行本が手から、するりと床に落ちて、ダーンという音で我に返ること。いつもは軽い文庫本が寝しなの友だが、村上春樹の新刊の単行本は重くても必ず買うことにしている。次作が待たれる。

 

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Comments

まだ買ってません。電車で読むには重いし、2冊まとめで買うと高いしで。
寝しなに読むにも床に落とすということを繰り返しそうだし(同じですね)
今回はなかなか手を出さずにいますが。感想をお聞きしたいところで。

空想や観念の怪物や地下道や井戸やら登場する春樹ワールドが
お好きでしたら読む価値がありますね。ストーリーに引き込まれて
しまいます。そして音楽、食べ物、比喩などが満載で飽きさせませ
ん。しかし手で持つのが重い。文庫本になってからでも。

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